スーツケースは、ボディ素材によって「ハードタイプ」「ソフトタイプ」の2つに分類されます。
「ハードタイプ」「ソフトタイプ」それぞれのスーツケースによく使用されるボディ素材には、以下のようなものがあります。
ハードタイプ | ソフトタイプ |
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単純にボディ素材といっても、いろいろな素材が使用されていることが分かりますね。
ボディにどの素材が使用されているかについては、メーカーやシリーズによって異なります。現在の主流としては、ハードタイプにはポリカーボネートやABS樹脂、ソフトタイプにはナイロンがよく使用されています。
強度や密閉性、防水性が要求されるハードタイプのスーツケース。ボディ素材には合成樹脂や合成金属といった素材が使用されています。
現在ハードスーツケース素材の主流となっているポリカーボネート。ABS樹脂よりも数倍の強度があり、ガラスに匹敵する透明性を持っています。ABS樹脂よりも少ない量で同等の強度を生み出せるため、軽量感・耐久性に優れたボディ素材を実現しています。透明性が高く少量で済むため、ポリカーボネート製のスーツケースはボディが薄くベコベコとしていますが、強度自体には問題がありません。
ポリカーボネートはABS樹脂よりも高価な素材なため、ポリカーボネートとABS樹脂を配合したハイブリッド素材で作られたスーツケースも多く出回っています。ポリカーボネート製造の有名企業には、ドイツのバイエル社、日本の帝人株式会社などがあります。
特徴 |
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価格を抑えて耐久性のあるボディ素材を実現できるのがABS樹脂です。ポリカーボネートに比べて分厚く重量があるのが特徴です。ポリカーボネートは薄く成型できる反面、触った時にベコベコしてしまうという特性があるため、これが嫌だというユーザーも居ます。そういった方にはABS樹脂や、ポリカーボネート+ABS樹脂でできたスーツケースを選ぶのがよいと思います。またABS樹脂は耐熱温度が70~100℃と比較的低いため、熱に対して弱いという欠点もあります。
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アルミニウム合金は、ポリカーボネートやABS樹脂といった合成樹脂が登場する前から存在し、現在でも広く愛用されている金属素材です。アルミニウム合金は、アルミニウムに銅・マグネシウムなどを混合することで作られます。アルミニウムは軽いといく特性がある反面、柔らかく強度に劣るために銅やマグネシウムと混合させて合金化することで強度を高めています。俗にジュラルミンケースと呼ばれている製品は、アルミニウム合金の一種です。軽量感と耐久性に優れ、また長期間使用し続けても素材が劣化しにくいという特徴もあります。
アルミニウムやアルミニウム合金は価格が高めですが、長持ちするので長く愛用したい人向けのボディ素材です。メタリックな外観がシンプルで格好がいいですね。
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アルミニウム合金製スーツケースで有名なのは、NASA(アメリカ航空宇宙局)も採用した密閉性・堅牢性を誇るゼロハリバートンや、有名アスリートも多く利用しているリモワなどがあります。
ポリプロピレンは自動車部品、医療用器具、日用品などにも広く用いられている合成樹脂です。ポリプロピレンはプラスチック素材の中でも軽量性に富んでおり、また外部衝撃に強く耐久性に優れているという特徴があります。耐熱温度は100~140℃と比較的高いですが、日光により素材が劣化しやすいという欠点もあります。耐久性を高めた強化ポリプロピレンといった合成樹脂を用いているメーカーもあります。
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ヴァルカンファイバーは1850年にイギリスで発明された素材で、特殊紙の上に16層もの樹脂をコーティングして作られています。見た目は耐久性がなさそうな印象ですが、想像以上に頑丈で「ゾウが踏んでも壊れない」と謳われていました。
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ヴァルカンファイバーのスーツケースといえば、英国の老舗ラゲージブランド「グローブ・トロッター」が有名です。グローブ・トロッターのスーツケースは見た目がとても魅力的ですが、価格が高いというのが難点です。私はグローブ・トロッターのクラシックデザインが結構好きです。耐水性はそこまでないので、雨に濡れた状態でそのまま放置しないようにしましょう。
軽量感や柔軟性が要求されるソフトタイプのスーツケース。ボディ素材にはナイロンなどの合成繊維が使用されています。
ソフトスーツケースで広く使用されているのが合成繊維のナイロンです。ナイロンに代表される合成繊維は軽量感や柔軟性があるため、気軽な旅を送りたい人にはピッタリの素材です。ナイロンは耐水性が低いため、耐水性を高めるために撥水加工がされている製品もあります。ソフトスーツケース全般にいえることですが、軽量感や柔軟性がある反面、防犯性は低くナイフやカッターで破くことができてしまいます。
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アメリカ陸軍の防弾チョッキにも使用されていたことで有名なバリスティックナイロン。その事実からも分かるように強度・耐久性が非常に高く、通常のナイロンの5倍もの強度を誇ります。耐熱性も高く、タバコの火を押し当てても数秒間耐えることができます。通常のナイロンよりも基本性能が高いので、価格はナイロンよりも高価です。
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バリスティックナイロンというと、日本のミリタリー系レーベル「ブリーフィング」を思い浮かべます。ブリーフィングは製造を本場アメリカで行い、輸入する形を採っています。
コーデュラナイロンは、通常のナイロンの2~7倍程度の強度を誇る合成繊維で、インビスタ社の登録商標生地です。コーデュラナイロンの強度については2~3倍、7倍とメーカーによって商品説明が異なりますが、スポーツバッグやシューズなど日用品にも広く用いられている素材です。
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スーツケースによく使用されているボディ素材を一通り紹介しました。
ハードタイプでは強度・防犯性・密閉性を重視しつつ、軽量化も期待できるボディ素材が優秀です。おすすめはポリカーボネート製のスーツケースですが、ポリカーボネートは非常に薄く加工できるためにボディが薄く手で触るとベコベコとします。このベコベコが嫌だという方は、ポリカーボネートとABS樹脂を配合したハイブリッド素材のスーツケースが良いのではないでしょうか。
ソフトタイプは合成樹脂のナイロンが主流です。軽量感があって価格も安いので、気軽に購入しやすいと思います。ナイロンの強度では物足りないと感じる場合、バリスティックナイロンやコーデュラナイロンといった強化ナイロン製のスーツケースを試してみるのも手だと思います。